食べものの話 その1

向こうでは何を食べているの? これは必ず聞かれる質問である。

カメルーンは土地が肥沃で、隣国にも農作物を輸出しているくらいの農業国だから、野菜や果物の種類が豊富だ。

市場で売っているものは、どれも新鮮で美味しい。果物の種類は季節によって多少変わるけど、オレンジ、パイナップル、バナナはいつでも手に入る。

どれも熟してから収穫するので、その美味しさと言ったら、説明するのが本当にむずかしい。口の中に入れると、その果物の香りが体中に広がる。

バナナだったら、果肉と上質のバナナエッセンスを一緒に食べているような感じ、と言ったところであろうか。

パイナップルは甘い。とにかく甘い。食べ始めたら止まらない。日本にいるときにはあまり果物を食べない人でも、ここでは虜になる。それは私のことだが。

個人的にいちばん好きなのはマンゴー。これは時期が限られる。2月から4月くらいが旬だ。

この時期に現地に行って誰かの家に招かれると、庭にマンゴーの木があるかどうかチェックするようにするようになってしまった。そして庭にお目当ての木を見つけると、私の目はキラキラと輝き出す(らしい)。

良く熟れた食べ頃のものだったら、7個くらいは平気でいける。おまけに現地の人に「ナイフがなくても手を汚さずにマンゴーを食べる方法」なるものを教わったので、マンゴーさえあればいつでもどこでも幸せ顔だ。

 

ある時、現地の友人が突然車を止めて、道端で激しく口論し始めた。彼女は村の言葉で話しているらしく、何を言っているのか私には全くわからない。

しばらくして彼女は車に戻ってきた。マンゴを3つ抱えて。

「3000シェーファーっていうのよ! 信じられない! 暴利だわ!」

彼女は季節外れのマンゴを偶然見つけ、私のために買ってくれたのだ。

私のマンゴー好きは、現地で有名になった。