【凄腕リペアの松本さん】

おかーちゃんは、ひと月待った。

その間、毎日床を眺めてはため息をついていた。

「は〜あ〜」

おかーちゃんは、インパクトドライバーで新しい床に穴を開けてしまったのである。

「はあ〜」

凄腕リペアの松本さんは引っ張りだこだ。

前回もおじーちゃんのカメラ庫をズリズリ引きずり、床をえぐって落ち込んだおかーちゃん。

松本さんは、あの深〜い傷を見事に直した凄腕の持ち主である。

おかーちゃんは、コネを使い、やっと予約を取った。

 

 

ウチに来た人は、自分の仕事を済ませたらおしまい、と思ったなら、それは大間違いである。

おかーちゃんは、今回も松本さんに張り付いてリペアのコツを根掘り葉掘り尋ねた。

 

「おかーちゃん、人によって使う道具が違うって松本さん言ってるじゃない。それって企業秘密ってことだよ。そんなにしつこく聞いたら失礼じゃない」

ハナちゃんが言っても、おかーちゃんは相変わらず聞く耳を持たない。

 

松本さんは朝から夕方まで床に座り、黙々と傷を治して帰って行った。

 

「どの角度から見てもどこを直したのかわからないのよ。基本的なやり方は親方から教えてもらえるらしいんだけど、あとは自分で工夫するしかないんだって。すごいわね」

 

おかーちゃん、もう床に穴を開けないでね。

リペアの予約取れないよ!