カメルーンの地を始めて踏んだ日

飛行機が無事ドアラ空港に到着した。

ドアラはカメルーン最大の都市である。しかし、飛行機の窓から見る外の風景は、空港らしからぬ光景だった。

私たちが乗ってきた飛行機以外に止まっている飛行機がないのだ。目に入るのは、バナナかヤシか見分けがつかない木々に囲まれた、二階建ての古びた小さな建物だけ。

扉が開くのを待って外に出た。昔の映画に出てくるようなタラップを降りながら、独特の香りに気が付いた。

どこの国に行ってもその国特有の香りがある。何の匂いだろう。その時はわからなかったけど、後々この国に通うことになって、この匂いを嗅ぐたびに、ああまた帰ってきたなあ、と思うことになるとは、その時は知る由もなかった。

入国審査場までの風通しが良すぎる廊下で、見知らぬ人たちが声をかけてくる。100ドルで手荷物を運んでくれると言うのだ。

大した荷物も持っていない私たちは、その申し出を断り、100ドルは高いのかな安いのかなと話しながら先へと進んだ。あとでわかったことだが、100ドルは地方の小学校教師の月収2ヶ月分であった。

しばらく歩くと、三方をガラスに囲まれ、人がやっと入れるくらいの小さな小屋が見えてきた。飛行機から降りてきた人たちがその小屋の前に並んでいる。入国審査だ。

ニコリともしないその係員は、私たちのビザとイエローカードをチェックし、バスポートの空きページに、何年も使っているのが明らかなスタンプを力任せに押し付けた。

宿所に着き、荷物を整理しながら、お財布の中を見ると、経由した国のコインがいくつか入っていた。

日本に帰ってきてから、ドバイの免税店でドルを使ったら、お釣りはアラジンと魔法のランプだった、なんて言っても誰にも信じてもらえなかった。

そのランプ模様のコインは思い出と一緒に我が家に飾られている。