「ただいま〜♪」
玄関のドアが勢い良く開いた。
「あ、おかーちゃんが帰ってきた!」
ハナちゃんと夏芽ちゃんは、いつものようにお迎えに出た。
でも、そこにはいつもと違う強烈な匂いが漂っていた。
「う!これ、ナニ?」
2ワンは顔を見合わせた。
「ミミズさんに匹敵するくらいのいい匂いだね。スリスリして背中に匂いつけしてもいいかな?」
おかーちゃんは、お休みを利用してお友達が借りている農園にお手伝いに行ってきた。
綿の収穫とからし菜の種まき、それから草刈りだ。
「大きなイチョウの木があってね、銀杏がたくさん落ちていたの。食べきれないから拾って行っていいよと言われたから、ビニールに入るだけ詰め込んできたわ」
ふ〜ん、詰め込めるだけね。おかーちゃんらしいな。
家の中で匂いを撒き散らして自己主張しまくっていた銀杏は、外に出された。
ハナちゃんが銀杏の香水を体にまとってお布団に入ってきたら大変だと、おとーちゃんは急いで皮をむいて下処理をした。
「残念だなー。体中に匂いつけしたかったのに」
「来月マルシェが開催されるからハナちゃんたちも連れて行くわよ」
「それなら、まあいいか」
ハナちゃんは、カレンダーに印をつけた。
「やった!マルシェだ!食べものいっぱい!」
あとひと月、ハナちゃんはマルシェの日を指折り数えている。