魂抜き取りカメラ

時と場合によるが、アフリカでは写真を撮るのがむずかしいことがある。

特に地方の市場でカメラを向けると、黒魔術をかけて魂を盗るつもりなのか、と追い払われるのは珍しいことではない。

写真を撮りたいなら、地元の人と一緒に行くのが得策だ。地位のある人ならなお結構。その日は友人の牧師さんに案内をお願いした。

月に三回ほど催されるという市の日に、牧師さんと一緒に村の中心部へと出かけた。にぎわっている市場には、いろいろなお店が並んでいる。その片隅に空きビンを並べて売っているおばあさんがいた。お客は誰もいない。古びた雨傘を日よけにして、ニコニコしながらこちらを見ている。

 

牧師さんに交渉を頼み、おばあさんの写真を撮らせてもらえることになった。その途端、隣に店を出していた人が叫ぶ。

「黒魔術にかけられるよ!」

するとそのおばあさん、「わたしゃ、すでに死んでるよ。無い魂をどうやって盗るんじゃ?」 と言い返した。

間違いなく売れないであろうと思われる古い空きビンを買う代わりにモデル代を渡すと、おばあさんは隣の人に、それ見たことかという笑みを返した。

嬉しそうにコインを受け取ったおばあさんの手はあたたかく、刻まれたシワは過ごしてきた年月を物語っていた。