【久々登場!】

ここはお江戸の片隅、いつものように腹を空かせたワンがふたり、襖の間から様子を伺っている。

久々登場、ご存知、ハナ吉夏吉のコンビである。

 

「夏吉、腹が減ったな。年が明けてから食い物にありついていないぜ。」

「そうだねぇ。ここはひとつ、おかーちゃん八丁堀の目を盗んで菓子をいただくとしようか。」

 

ちゃぶ台の上には、岡っ引きおとーちゃんが袖の下にと持参した菓子が置いてある。

「ハナ吉、いい塩梅に火鉢の火が落ちているよ。おかーちゃん八丁堀は年始の挨拶へ回っているに違いない。今が狙いどきだ。」

 

ふたりは、忍び足でちゃぶ台に近づいた。

ところが、である。

猫でないハナ吉と夏吉の足音はフローリングに大きく響いた。

 

「そこの怪しいワンズ!引っ掛かったな!今度こそ、御用だぁ!」

そこには十手を持ったおかーちゃん八丁堀が!

「し、しまったあ!」

 

ふたりは大急ぎで縁の下に逃げ込んだ。

「ここで諦めてなるものか。何が何でもあの縁起のいい菓子をゲットしてやる。」

ハナ吉夏吉、リベンジを誓った、正月3日であった。