水と大盛りごはん
バフサムで泊めてもらった家は、雨水を貯めて生活していた。当然、飲み水と、その他の水は別にしてある。
喉が渇いたので、家の人に聞いてみた。
「これ、飲める水?」
「そうよ」
その時は、きれいな水に慣らされた日本人の弱さを知らなかった。
上から下からの大騒ぎになったのは、次の街に着いてからだった。
「なんか熱っぽい。それに吐き気がする」
日本から持参した粉末のポカリスウェットを水に溶いて飲む。脱水症状を防ぐためだ。
治ったかな、と外出すると、また始まる。この繰り返しだ。
こういう時に限って、行く先々でご馳走が出される。出されたものは全部食べないと失礼にあたる、なんて一体誰が言ったんだ。
来客が残したものは子供たちが食べる。子供たちが食べないなら、豚か鶏の餌になる。食べ物を捨てるなんて発想はない。
それにしても現地の人の胃袋は大きい。毎食ごとの大盛りごはんに閉口した私は、市場で内側に赤い線が描いてあるお皿を買った。
「私のごはんは、この赤いラインを出たらいけないことになったの」
買ってきたお皿を夕食前にホストマザーに差し出した。
「誰が決めたルール?」
「わ・た・し」
二十年経った今でもそのお皿は活躍している。