カメルーンは遠かった

パキスタンのカラチでケニア航空に乗り換えだ。時計を現地時間に合わせ、電光掲示板を確認すると、出発時間は翌朝になっている。外に出るより空港内にいた方が安全だろうと判断した私たちは、構内の硬いベンチで夜を明かすことにした。

ところが、カラチ空港、しょっちゅう停電する。電気がチカチカ点滅し始めたと思ったら、いきなり真っ暗になる。これを一晩に何回も繰り返すのだ。海外の、しかも中東の空港での暗闇はいただけない。不安な夜を過ごし、何とか飛行機に乗り込んだ私たちは、ほっと一息ついた。

ケニアのナイロビ空港では、旅行会社の人が迎えに来てくれていた。日本人だ。民宿も兼ねているそのご家族の家へは3日間の滞在予定である。何故なら、カメルーン行きの飛行機は三日後でないと出発しないからだ。

「せっかくケニアに来たんだから、サファリに行ってきたらどう?」

奥さんの勧めもあって、私たちは1泊2日のサファリツアーに参加することになった。

小さなバスで走ること数時間、車はいきなり道の真ん中に止まった。ここからホテルまでは山道を歩かなくてはならない。野生動物を車の音で驚かさないようにするためだ。

そのホテルは草原の真ん中に建っていた。四方を見渡しても近代的な建物はそのホテル以外には見当たらない。

日が暮れ、屋上に出ると、ホテルの周囲に人工的に作られた水飲み場にやってくる水牛やキリンを見ることが出来た。

「今は雨季だから、見られる動物はそんなに多くないかもしれませんね」

海外青年協力隊で来ているという男性はそう話してくれた。

立派そうに見えるホテルの部屋の窓からは隙間風が入ってきた。昼間は気温が上がるが、夜は冷え込む。なるほどね、これならアフリカでも毛布が必要ね。私たちは納得した。

あっという間に3日が経ち、いよいよカメルーンへ出発する日となった。ナイロビ空港まで車で送ってもらい、お世話になったお礼を述べ、チェックインを済まそうとした。ところがである。送ってくれた旅行社の人は、のんびりしたこちらの空気に馴染んでしまったのか、私たちの航空券を家に忘れてきたという。私たちは来た道を戻ることになってしまった。

「またお世話になります」私たちの挨拶を聞いた奥さんは苦笑した。