【麻酔の夢】
今日はドライブだよ♪」
「やったー!」
ハナちゃんは喜んで車に乗った。でも着いたところは動物病院だった。
診察台を前にして、ハナちゃんはブルブル震えた。
それなのに、おとーちゃんは、先生にハナちゃんを手渡したんだ。
また置いて行かれるんだ。
こうなったら思いっきり吠えてやる。
そしたらまたすぐにお迎えに来てもらえるだろう。
でも、また、あの先のとがった注射針というものが、ニヤ〜っと笑いながらハナちゃんに近づいてきたんだ。
ハナちゃんは、眠くなった。そして夢を見た。
おとーちゃんが、脚立に乗って楽しそうに紅葉の葉っぱをチョッキンチョッキンしている。おかーちゃんも笑いながらそれを眺めている。
「今年の紅葉は赤いわね。気温の差が大きかったのね。こんなに綺麗な赤はなかなか見られないわ。」
そうか、貴重な赤なんだ。下に落ちた紅葉はふかふかして気持ちよさそうだ。ハナちゃんは真ん中に乗ってみた。
紅葉のお布団はちょっと硬かった。
ハナちゃんはいつものお布団の方がいいな、と思ったらキャリーの中で目が覚めた。
ハナちゃんの前足には、注射針が入れられたままだ。相変わらずこっちを見てニヤ〜っと笑っている。
ハナちゃんは、キャリーが嫌いだ。キャリーに入れられたまま捨てられたからだ。おとーちゃん、早く迎えに来てよ!